My Sunshine & Little Stars わたしのタカラモノ in London

疾病と運転免許、まさかは誰にでも起こりうるもの

最近の日本のニュースで、「大型クレーン車が登校児童の列に突っ込み6人の子供が死亡した」というものがあった。当初、居眠り運転が原因とされていたが、真相は持病のてんかんの薬を飲み忘れたために意識消失発作を起こしたのだった。

てんかん薬を服薬中の人が大型クレーンを運転!?

と信じられない気持ちだった。
というのも、以前に受けたMRCP(Members of Royal College of Physician)の最終試験パート3(ちなみにこの試験は各専門分野に進むほとんどのドクターが受験する)では、「運転免許と疾病」というのは必須問題のうちの一つで、試験の想定シナリオの例としては、

「意識消失発作(てんかんを想定)を起こして入院中の患者と、退院後の生活について話し合いなさい。」

この場合、日常生活の注意点、例えば入浴(浴槽ではなくシャワー)、スポーツ(水泳や乗馬を避ける)などの他に、「職業」を問診しないとその試験ステーションではまず間違いなく落とされる。よくある試験のパターンでは、患者役の俳優が実はローリードライバーで、「免許がなきゃ家のローンも払えないし、仕事は続ける。俺は薬もしっかり飲むから大丈夫だ。」などと言い出すのであるが、ここでドクターはあくまでも説得しなくてはいけない。そして、もしもそれでも納得が得られない場合には、最終手段としてDVLAに通報しなくてはならないのだ。こういうやりとりはカルテ上にも記録として残るので、無視した場合の自動車事故の保険はおりないとか、生活が問題なら、行政から当面の無職の間の手当てが出る算段をつけるとか、会社に運転以外の事務職に変えてもらうよう依頼するレターを書くとか、本当にいろんな方向から患者を説得しなくてはいけないのである。

このイギリスの運転免許を統括するDVLA (Driver and Vehicle Licensing Agency)では明確にGroup2免許(大型免許、タクシーやバスなども含む)の場合、てんかんに関しては
「服薬を必要としない状態で最低10年間発作が起きていないこと」
の条件をクリアーしないと免許は発行されない。
Group1免許(普通免許)の基準はもう少し緩やかで、
「最低一年の免許停止。その後、服薬などの治療でコントロールが良好な場合に免許を再発行できる」
となっている。
このほか、DVLAのホームページには「疾病と免許」の項があって、「精神神経病(癲癇のほか、精神病、脳梗塞など)」、「心臓血管病(心筋梗塞、狭心症)」、「腎臓病」「糖尿病」「薬物・アルコール依存」などにつきそれぞれに免許の基準が明確に表示されている。

日本の場合・・・インターネットで調べようといろいろ検索を試みたが、明確に記されているページを見つけることができなかった!いくつかの県警察のページなどで、どうやら2001年までは精神神経病、てんかん、麻痺などの疾病がある場合免許は発行されなかったが、患者団体などの働きかけにより2002年の道路交通法の運転免許の失格事由が変更され、各病名が削除。変わって、「意識消失発作などの既往がある方」は「個別に審査される」という相対的欠格事由に変更になったらしいが、ではどんな基準で免許が与えられるのかなど全くもって不明。おそらくは、医療者(主治医)の判断になるのでしょうが、そんな判断ができるドクターがどれくらいいるのでしょうか?
今回の運転者は3年前にも運転中意識消失して歩道を歩いていた子供に重症を負わせたり、過去8年間で6件もの物損事故まで起こしていたそうです。一体どうして、警察も医療側もこの男が免許を保持していることを可能にさせたのか、考えるべきだと思います。

実は私も日本では医学生のときも、医者になってからも、患者さんの運転免許のことなんて考えたことがありませんでした。
こんな痛ましい事故が起こってからでは遅いに決まってますが、日本もしっかりとした法律を明確に作り、医療者も免許についての知識と、警察との連携をとるべきだと思います。プライバシー、差別の問題から「てんかん」などの病名が失格事由から削除されたそうですが、むしろ、いろいろな疾病について明確に基準をつくり周知することで、差別などというものをなくすようにすべきだと思います。

最近こんな痛ましいニュースのほかにも、2歳の男の子にパンを無理やり口に突っ込んで窒息死させた母親、家に幼子二人を残して両親揃ってパチンコに行き、家に帰ったら9ヶ月の赤ちゃんが死んでいた・・・なんてニュースが並んでいます。
震災・津波で2万5千もの命が「どうしようもなく」失われた同じ時期に、「絶対に救いようがあった」命が亡くなっていくのは本当に悔しくて悲しい気持ちになります。

「まさか・・・は誰にでも起こりうる」という想像力を持ち続けて、小さな、無抵抗な命を守らなければならないと思います。

(後記)
大学の先輩がこの記事を彼女のFBに書いてくださったところ、脳外科のドクター(てんかんの外科治療の専門の先生)から、日本でも運転免許の適正基準はきちんと定められているというご指摘をいただきました(日本てんかん学会関連資料http://square.umin.ac.jp/jes/index.html)。
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by marikology14 | 2011-05-02 22:30 | そのほか

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