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My Sunshine & Little Stars わたしのタカラモノ in London

どこまで

今やたくさんの抗がん剤があり、ある程度の(しかし基本的に転移固形癌を根治させる治療薬はないし、個々の腫瘍で反応性は違うけれども・・・)延命治療が可能となっている。けれども、ふと思うのだけれど、抗がん剤の治療自体、病院への通院や、治療の副作用など、けっして楽なものではない。ましてや家族から遠く離れての治療となるとその代償はかなり大きい。

去年の今頃、わざわざクウェートから患者さんが入院してきた(クウェートは国がこういう治療費を負担するからすごい・・)。30才そこそこの少女のような女性だった。4年ほど前の最初の乳がん手術、術後補助化学療法(FEC+CMF)に放射線、ホルモン治療というフルコース治療を自国で受けたにも関わらず2年もしないうちに転移が見つかった。去年には脳転移のためロンドンの別の病院に入院して放射線治療、カペシタビン、その後もドセタキセル+アントラサイクリンを受けていた。今回、すさまじく広範な胸壁再発と加えて象の足のようになった右腕リンパ浮腫、さらなる脳転移の治療目的で渡英した。(抗がん剤が進歩した反面、従来の肺・肝臓ではなく、脳や皮膚といった抗がん剤が効きにくい部位が問題となることが増えているように思う)。

結果からいうと、パクリタキセル、その後アバスチンの併用、など行ったが病状はゆっくりとではあったがじわじわと進んでいった。別のコンサルタントによるセカンドオピニオンも受けたが、患者さんとご主人にとって「治らない」ということが理解できないようだった。しかし気がつけばこのロンドンの病院に入院して7ヶ月も経っていた。いつも3人の幼い子供たちの写真が枕元に飾ってあった。
どこまで_f0221040_5353048.jpg
可能性はものすごく低いという説明にも関わらず、別の抗がん剤を試してくれというご主人に、最初わたしのボスの教授は前向きなようだった。いつもはハッピーに彼の下で働いているのだれども、このときばかりは言葉にこそ出さなかったが思いっきり顔に「大・反・対」と書いてみた。そのせいかどうかはわからないが、どうにか彼らを説得して、翌週には飛行機や付き添いのナースも手配して帰国する手続きをとった。


その後、1ヶ月ほどして亡くなったと聞いた。
何が正しいやり方だったのかはまだ考え中だ。



by marikology14 | 2010-03-10 05:22 | 医療

ロンドンで医師として働き&子育てしながらの日々雑感ブログ
by marikology14

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